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雪ごもりをしていた週末、久しぶりに、宮沢賢治の詩集を開きました。 この詩集は、これまで何度となく読んできたものです。 いつも読み返すたびに思うことは違うけれど、一番好きな詩というのは、何度読んでも、いつも一番好きなものですね。 ~・~・~・~・~・~ 「あすこの田はねえ」 あすこの田はねえ あの種類では窒素があんまり多過ぎるから もうきっぱりと灌水(みづ)を切ってね 三番除草はしないんだ ……一しんに畔を走って来て 青田のなかに汗拭くその子…… 燐酸がまだ残ってゐない? みんな使った? それではもしもこの天候が これから五日続いたら あの枝垂れ葉をねえ 斯ういふ風な枝垂れ葉をねえ むしってとってしまふんだ ……せはしくうなづき汗拭くその子 冬講習に来たときは 一年はたらいたあととは云へ まだかゞやかな苹果(りんご)のわらひをもってゐた いまはもう日と汗に焼け 幾夜の不眠にやつれてゐる…… それからいゝかい 今月末にあの稲が 君の胸より延びたらねえ ちょうどシャッツの上のぼたんを定規にしてねえ 葉尖(はさき)を刈ってしまふんだ ……汗だけでない 泪も拭いてゐるんだな…… 君が自分でかんがへた あの田もすっかり見て来たよ 陸羽一三二号のはうね あれはずいぶん上手に行った 肥えも少しもむらがないし いかにも強く育ってゐる 硫安(りうあん)だってきみが自分で播いたらう みんながいろいろ云ふだらうが あっちは少しも心配ない 反当(たんあたり)三石二斗なら もうきまったと云っていゝ しっかりやるんだよ これからの本当の勉強はねえ テニスをしながら商売の先生から 義理で教はることでないんだ きみのやうにさ 吹雪やわづかの仕事のひまで 泣きながら からだに刻んで行く勉強が まもなくぐんぐん強い芽を噴いて どこまでのびるかわからない それがこれからのあたらしい学問のはじまりなんだ ではさやうなら ……雲からも風からも 透明な力が そのこどもに うつれ…… 宮沢賢治、「あすこの田はねえ」、『新編 宮沢賢治詩集』、天沢退二郎編、新潮文庫 ~・~・~・~・~・~ この詩はいつ読んでも、涙が出そうになります。 こんな目線で寄り添ってくれる大人が一人でも身近にいれば、それだけで子どもは育っていくだろうという気がします。 久しぶりに読み返してみて感じたことは、、、大人が子どもに対する場合だけには限らないなぁということです。 誰かを理解したいと思うとき、誰かのそばに居たいと思うとき、こんな並び見の姿勢で寄り添える人でありたいな、と思いました。
by anim-_-m
| 2006-01-25 06:17
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